3F LOBBY

藤野征一郎

Fujino Seiichiro

  • 1972年 滋賀県生まれ
    1998年 金沢美術工芸大学 修士課程 美術工芸研究科 修了
    2002年 金沢卯辰山工芸工房 修了
    現在 石川県にて制作活動

    [ ステイトメント ]
    私の作品は主に木材を素地にして、彫刻加工で成形を行います。そして本漆だけを使用した下地や塗り、箔や鉛を使用した加飾を施す等、漆芸の伝統技法に基づいた制作を行っています。
    漆そのものの塗膜は隠蔽力がとても弱く、通常30回以上の塗りや下地の工程を丹念にこなさなくては美しい仕上がりとなりません。 この隠蔽力の無い特徴から、私は漆というものが「透明」であることを意識するようになりました。 もちろんそれは視覚的な意味ではありません。繰り返される漆塗膜の積層から生み出される表層に、独特な透明感が体現されていることに気付いたのです。
    私はこの透明感を解り易く伝えたいと考え、素地になる木材の彫跡と漆艶との構成による、素材の対比表現を行ってきました。彫跡による質感は、木材素地の存在および視覚できることのない内部を暗示しています。 そしてそれらは独特の透明感を持つ漆艶の表層、すなわち外部と密接に絡み合っているのです。伝統的な漆芸技法は主に有機物を素材に扱うことからも、自然や生命を創出するかのような感覚を抱きます。そしてその内部と外部の関係性においても、私は同様の感覚を抱いてきました。 そのような質感表現や造形表現を追求していくなかで、私は素材そのものが生きている様を表現したいと考えています。