アートとは何か。最初アートは「きっかけ」だと思ったんです。それできっかけをググったらトリガーが出てきて、その前に「見えない」という修飾語を付けました。“ 見えないトリガー” とは、どういうことか。
アートというのは、ある種の触媒。言語化されていない「あ、これかも」という漠然としたもので、みんなに共通の概念がなくて理解されにくいもの。でも何かあるから狙いを定めて「バンッ」とトリガーを引く。その行為によってできたものが作品と呼ばれたり、イノベーションになったりする。そうやって新しい道を拓いていくことだと思っています。
私たちの会社スマイルズも、ビジネスとアートを行き来しながら、この見えないトリガーを探しているんです。アーティストも企業も、アートを意識していない一個人でも同じような状況はあって、その中にアートは潜んでいると思っています。私たちがビジネスを軸に作品を出展したり、コレクションしたり、アート業界に“ ちょっかい” だしているのは、何かに出会うための見えないトリガーを引くためだったりするんです。
アートはビジネスではないが、ビジネスはアートに似ている。
アートはビジネスではないけど、ビジネスはアートに似ていると思っているんです。彫刻家なら石の塊から視覚的に見えてないものを掘り出す。それがアートが生まれる瞬間。ビジネスも何もないところから、世の中のためになっちゃうんじゃないかなと思ったことを言語化してみんなで考えてどんと提示する。この感覚は似ているものだと思っています。
スマイルズでは、知り合いの若手作家の作品も買っています。現代アートは作家を知るのも醍醐味のひとつ。そこには、応援という気持ちもそうですけど、一緒に見えないトリガーを探して作品づくりを共謀できればとも思ったり(笑)。またアーティストが魅力的だと、買いたいって思うんです。アートフェアだとそういう作家と知り合える機会も多い。なにより自分が「これいいな」と思う気持ちを信じて、作品を見ていくとアートをより楽しいかもしれませんね。