FRAGILEfragile

nyantama_2021_11

Profile

「Fragile creatures」というシリーズで展開しているペインティングは、その全てに共通するテーマの一つとして生命のはかなさ、危うさ、壊れやすさを持っています。「Fragile」とは壊れやすいこと、はかないことを意味する言葉ですが、私のペインティングに登場する生き物たちはバルーンのボディを持ち、その名の通り、とても華奢な存在として描かれています。空気が込められた、薄い皮膜のボディしか持たない彼らは、非常に危ういバランスで生きているのです。
そうしたふとしたことで損壊するかもしれない生命のあり方を描くことは、現実の生き物たちをとりまく状況のアレゴリーでもあり、あるいは彼らをそうした状況に置いている私たち自身へのサタイアでもあります。

時として私たちは無自覚的に、あるいは自覚的に、いくつもの生命から居場所を奪い去ります。
私のペインティングは80年代以降のポップアートの手法を使い、一見すると可愛らしさが目に飛び込み、テーマにすえた死生観は感じにくいように設計していますが、生き物たちが置かれたシチュエーションもまた一見しただけでは見通しがきかず、普通には彼らが持っている可愛らしさだけがピックアップされてしまいます。
またバルーンは、一般的には祝祭のような、華やかな場所を装飾するためのアイテムです。そうした大量消費的な価値観をイメージさせる工業製品を引用し、そこに生命のはかなさや壊れやすさの意味を与え、今日の私たちが繰り返し行っている生命の消費について、表面上の世界と実際の状況とをオーバーラップさせて示すことが、私のペインティングが持ちうる時代へのコミットメントなのです。

兵庫県 神戸市出身

[ 略歴 ]

  • 2019 多摩美術大学卒
  • 2021 2月 コロナ禍の入院をきっかけに作家活動を開始
    11月 VINYL TOKYO 個展
  • 2022 5月 Waluso Gallery(London) 個展