KOBE ART MARCHE

Interview 06 / Goujin Nomura

野村豪人/究極の丹波焼表現を求めて野村豪人/究極の丹波焼表現を求めて

温かみある丹波焼の焼き物を数々作り出す陶芸作家・野村豪人さん。元々サッカー少年でサッカーの実力はスポーツ推薦で大学へ入学できるほどだった。そんな野村さんの岐路は成人式の日。「手に職を付けたい」と奮起し、大学を自主退学した時だったという。
佐賀県「北山窯」小川哲男師に2年間師事し、佐賀県立有田窯業大学校で基礎を学んだ後、丹波焼「末晴窯」西端正師の元へ弟子入り。丸5年の修行を終えて2002年に独立すると、丹波焼の産地・篠山市今田町に「豪人窯」を築窯した。現在は個展やアートフェアに積極的に出展しながら、独自の丹波焼表現を模索している。

Photo: shoko hara Text: Shingo Mitsui / Yuki Teshiba

母からのススメ

最初に陶芸家を目指したきっかけは何だったんでしょうか?
サッカー小僧だったので、幼いときからサッカーしかしていませんでしたが、成人式の日に「手に職をつけていきたい」と思って、母に相談したんです。母は、私の指が太く短かったことから「農家とか土を触ったりする仕事が合うかも」と勧めてくれました。それで知り合いのギャラリーに陶芸家の先生を紹介してもらったのが陶芸に飛び込んだ最初です。
陶芸の世界に入ってすぐの頃、修行時代はどうでしたか?
最初は唐津焼の北山窯の小川哲男師のところに弟子入りしました。全く無知のままこの世界に飛び込んだので、最初の半年間は師匠の横で立っているだけでした。そのあいだは、薪割り、土練りだけ。もっと土をさわる修行ができると思っていたら、見ているだけの期間が長く、ただ目で技を盗む毎日でした。2年の修行後、あまりに無知だったため佐賀県立有田窯業大学校に入り直して2年間基礎を学んで丹波焼の西端正師のところへ行ったんです。なので技法的には九州の技法も入っています。
作品づくりにインスピレーションを受ける物や大事にしている道具などあれば教えてください。
地方に行った時に見る建築物や道に落ちている自然の石のかたちだとか、いろんなところに自分の目につく好きな表情があるんですね。そこを頭に入れて作品作りをしています。あと、大事にしている道具ですが、修行時代に作った花模様の付いた「三島手の判」など自分で手作りした道具には愛着があります。印鑑なのですが、すごくこだわって作ったし、今でも大事にしています。

作家活動と商品制作の日々

日本六古窯の1つ「丹波焼」産地で、野村さんは家族と暮らしながら焼き物を制作している。古民家を改築したギャラリーや窯元仲間の工房、有形民俗文化財に指定されている登り窯など、陶の郷の園内を案内してもらいながら、陶芸作家の一日についてうかがった。
時間は伏せておきますけど、朝はゆっくりです(笑)。集中できるのは、やっぱり誰も来ない、電話も鳴らない夜中。私は夜こそこそと制作をするタイプなんです。夜中はメインに作家活動を行って、日中は窯もの商品を作るという感じで過ごしています。ただ作家活動はスランプになると、ろくろには触らず材料になる土を採取しに行ったり、窯もの商品だけを作るようにしてできるようになるまで待ちます。
陶の郷では窯元同士の交流も盛んで、若手作家を中心に今後の丹波焼について熱く語りあうこともしばしばあるという。

陶土へのこだわり

野村さんは、兵庫県を代表する焼き物の産地で独立したいという気持ちから丹波焼の産地で、豪人窯を築窯した。土に恵まれ、煙をあげても文句を言われない、お客さんが来てくださるのはやっぱり産地の魅力だと語る。
私の場合、九州の技法も入っているので、100%丹波焼ではありません。でもこの地方で採れる土を使って表現する焼き物が私の中の丹波焼きの表現だと思っています。良い焼き物に欠かせない要素として「一土・二焼・、三細工(いちつち・にやき・さんさいく)」という言葉があって、私も土にはこだわっています。今の時代、電話一本で簡単に土が手に入る。そういう時代だからこそ自分で掘ってきた粘土をブレンドして使っているんです。
陶芸を通してどういう表現を今後していきたいですか?
焼き物の歴史は古く、今やっている技法や手法は二番煎じになってしまうんですが、そんな中で自分の焼き方とか技法が見つけられればと日々勉強しています。変化をつけないと自分の成長が分からないのであえてやっていない技法を探したり、究極の焼き方だとか誰も考えつかないことに挑戦してオリジナルの丹波焼「豪人焼」が出来ればと思ってます。また、自分も自由な道に挑戦してきたので、息子にも自由な道を羽ばたいてもらいたい。もし陶芸がしたくなったらいつでも陶芸ができる場所も築けたので、思う存分やりたいことに挑戦してもらいたいです。

丹波焼を拡げていくこと

毎年『Discover TAMBA』として神戸アートマルシェに出展いただいてますが、丹波を代表して何かあれば?
神戸を代表する最大級のアートイベント「神戸アートマルシェ」のあのホテルの客室の空間というのが、私たち5人にとっても年にいっぺんの楽しい時間なんですね。極端に作風を変えるっていうわけではないんですが、客室の空間にあう今やっている仕事の延長上での表現がすごくポップにとらえられて面白いので楽しみにしています。
アートフェアにも積極的に出展するという野村さんに元町アートマルシェについてもおうかがいした。
昔の陶工たちがこの土地で焼き物を続けてきて、産地というものができました。昔は売りにまわっていましたけど、今は観光客のお客さんを受け入れるようになってしまい、自分たち発信で県内とか全国に丹波焼をPRすることが少なくなっています。お客さんを待っている状態なんですね。それでは広がらないし、私たち窯元発信で元町を含め全国的にいろんなところに物を持って行って丹波焼をPRするひとつのきっかけをいただいたなと思っています。

ARTIST PROFILE

野村豪人

1972年、兵庫県芦屋市生まれ。20歳のときに大学を中退して陶芸の世界に飛び込む。有田窯業大学校や小川哲男師、西端正師のところで陶芸を学んだ後、丹波焼の産地、篠山市今田町に豪人窯を築窯。現在は個展を中心に神戸アートマルシェや全国の元町アートマルシェで精力的に作品の発表を続けている。

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